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【完全ネタバレ】バイオハザード2(1998)ストーリー完全解剖|ラクーンシティ崩壊の全貌とG-ウィルスの真実

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『バイオハザード2』(1998)のストーリー・設定

1998年にPlayStation向けに発売された『バイオハザード2』(海外名:Resident Evil 2)は、サバイバルホラーゲームの金字塔として知られる作品である。

本稿では、『バイオハザード2』の本編ストーリー(表裏二部構成)舞台設定、ゲーム内ファイルの考察、G-ウィルスとアンブレラ社の研究設定などを詳細に解説して行く。

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本編ストーリーの詳細:二部構成の物語と展開

バイオハザード2』の物語は、レオン編クレア編の二つの視点から展開される二部構成(いわゆる「ザッピングシステム」)を特徴とする。プレイヤーは新人警官レオン・S・ケネディと、前作主人公クリス・レッドフィールドの妹クレア・レッドフィールドのいずれかを操作し、表シナリオ(第1部)と裏シナリオ(第2部)の両方を体験することで物語の全貌が明らかになる。

この構造により、選んだ主人公によって出来事の順序や細部が変化し、二人の物語が補完し合う仕組みとなっている。

ゲーム内で主人公の行動がもう一方のシナリオに影響を及ぼす点は斬新であり、当時の批評家から「表の行動が裏シナリオに影響するコンセプトはかっこよかった」と評価された。以下では、レオン編とクレア編それぞれのストーリー展開を、両シナリオの相違に触れつつ概説する(※本節は作品内容の詳細なネタバレを含む)。

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筆者的にも世間的にもザッピングシステムの評価はかなり高い。「2」の代名詞とも言えるこのシステムがRE2で排除されてしまったのが残念すぎる。

レオン編のストーリー展開

ラクーンシティ到着と警察署での戦い

1998年9月29日深夜、新任警官レオン・S・ケネディは初出勤の日にラクーンシティに到着する。しかし市内は既にバイオハザード(生物災害)の真っただ中で、市民の大半が正体不明のウィルスに感染しゾンビ化していた。

レオンは街で偶然出会った女子大生クレア・レッドフィールドと協力して逃走を図るものの、途中で事故に遭い離れ離れとなる。レオンは単身ラクーンシティ警察署(R.P.D.)へ避難するが、署内も既に壊滅状態で多くの警官が犠牲となっていた。

彼は負傷した警官マービン・ブラナーから状況を聞き出し(マービンは後に感染が進みゾンビ化)、署内の生存者を探索しつつ脱出手段を探ることになる。

道中、レオンは署内の牢屋で調査報道記者のベン・ベルトリッチに出会い、市長の娘が署長室で死亡しているという情報や、アンブレラ社の極秘研究についての手掛かりを得る。しかし、直後にベンは何者かに襲われ致命傷を負い、息絶える間際に研究所への下水道経路に関するファイルをレオンに託す(彼の死因は後述するG生物の幼体によるものだった)。

こうした過程で、レオンはアンブレラ社がこの事件の背後にいるという確信を深めていく。

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現代になって本作を初めてプレイした人はレオンの顔の変わりっぷりに驚愕した人も多いのではないだろうか?筆者的にはむしろこっちが見慣れた顔。

エイダ・ウォンとの協力

警察署内を探索中、レオンは謎の女性エイダ・ウォンと遭遇する。エイダは「恋人のジョンを探しに来た」と名乗りレオンと行動を共にするようになる。

レオンはエイダと協力し下水道へ脱出を図るが、下水施設でもクリーチャーの襲撃や罠が待ち受けていた。途中、下水道内で巨大な下水ワニ(アンブレラ社の実験廃棄物を摂取して突然変異した生物兵器)に襲われるが、レオンは知略を用いてこれを撃退する。

下水道を進んだ二人は、アンブレラ社の地下研究所へ通じるトラム(輸送列車)に乗り込む。しかしその直後、レオンは謎の怪物化したウィリアムに襲撃され重傷を負ってしまう。レオンはエイダとともに研究所へたどり着く。

地下研究所での最終決戦と脱出

地下研究所「NEST」(ラクーンシティ地下に存在するアンブレラ社の極秘研究施設)では、既にT-ウィルスとG-ウィルスの漏洩により所員たちが全滅していた。レオンはG生物と化したウィリアム・バーキンの襲撃を何度も受けつつ、ウィルスのサンプルを巡るアンブレラ内部の抗争を知ることになる。

彼は研究所最深部でアンブレラ社の極秘文書を入手し、アンブレラ特殊部隊U.S.S.(アルファチーム)がG-ウィルス強奪のためバーキンを襲撃した事実や、その際に漏洩したT-ウィルスがネズミを媒介に市中感染を引き起こした経緯を知る。

一方、重傷を負ったエイダの正体も明らかになる。彼女は実はアンブレラのライバル企業に雇われたスパイであり、密かにG-ウィルスの奪取を狙っていたのである。互いの立場を知り動揺するレオンとエイダだが、もはや脱出が最優先であった。

研究所の自己破壊シークエンスが作動する中、レオンは執拗に追跡してくるタイラントT-103と対峙する。タイラントは最後の変異を遂げ「スーパータイラント」と化してレオンに襲いかかるが、間一髪のところでエイダ(実は生存していた)からロケットランチャーが投げ渡され、レオンはタイラントを粉砕することに成功する。

直後、レオンはクレアおよびシェリーと合流し、爆発寸前の研究所から貨物列車での脱出に成功する。その背後で、ついに暴走したG-ウィルス怪物(バーキン)は最終形態となって崩壊する研究所もろとも消滅した。こうして長い夜は明け、生還したレオンはシェリーを保護しつつ、アンブレラ社打倒を胸に誓うのであった。

クレア編のストーリー展開

ラクーンシティでの邂逅と警察署探索

クリス・レッドフィールドを兄に持つ大学生クレア・レッドフィールドは、兄を捜すため9月29日にラクーンシティを訪れた。彼女は市内でレオンと出会い行動を共にするが、逃走中の事故でレオンとはぐれてしまう。

クレアは単身でラクーン警察署に逃げ込み、生存者の探索を開始した。署内を調査する過程で、彼女は幼い少女シェリー・バーキン(ウィリアム・バーキン博士の娘)と出会う。シェリーは母親(アネット・バーキン)に「警察署に逃げなさい」と指示され孤立していたところをクレアに保護される。

クレアはシェリーを守りながら署内を巡る中で、署長ブライアン・アイアンズの秘密にも直面することになる。アイアンズ署長は本来市民救助の指揮を執るべき立場であったが、実際にはアンブレラ社と癒着した彼の妨害工作によって警察の対応は混乱し、市民の避難も妨げられていた。

署長自身も精神に異常をきたし始め、生存者に対する殺戮衝動を募らせていた。彼の執務室では市長の娘キャサリン・ウォーレンの遺体が発見され、アイアンズが狂気に駆られて彼女を殺害し「剥製」にしようとしていたことが示唆される。

クレアはついにアイアンズ署長本人と対峙するが、直後に署長は何者か(後に判明するG生物)に襲われて死亡し、クレアとシェリーは署長室の地下通路から下水道へ逃れる。

シェリーの危機と地下施設

下水道へ避難したクレアたちだったが、その途中で再びG生物ウィリアム・バーキン)の襲撃を受け、シェリーが行方不明になる。クレアはシェリーを追う中で、彼女の母アネット・バーキンとも遭遇する。

アネットから事情を聞き出したクレアは、今回の事件がアンブレラ社内部の抗争(G-ウィルス強奪作戦)によって引き起こされたこと、ウィリアム博士が娘シェリーを宿主に選びG-ウィルスの胚を植え付けたことを知る。

ほどなくしてシェリーを発見したクレアだったが、既にシェリーは父親の手でG-ウィルス胚を体内に植え付けられており、このままでは時間とともにシェリー自身が新たなG生物へ変異してしまう危険があった。クレアはシェリーの命を救うため、胚が成熟する前にG-ウィルス用ワクチンを生成すべく地下研究所へ向かう決意を固める。

地下研究所での決断と脱出

アンブレラ社の地下研究所に到達したクレアは、所内に残された資料から「G-ウィルス感染者のワクチン(ワクチン剤DEVIL)の合成手順」を突き止める。彼女は施設内の実験設備を駆使し懸命にワクチンを調整するが、その最中にも変異を重ねるウィリアム(G生物)に執拗に襲われる。

クレアは幾度目かの死闘の末にG生物を撃退し、完成した抗ウィルス剤をシェリーに投与することに成功。これによりシェリーの体内で孵化しかけていたG幼体は消滅し、クレアはシェリーの命を救った。

直後、施設の自己破壊プログラムが作動したためクレアはシェリーと脱出を急ぐ。爆発まで残り時間がない中、クレアはかろうじて貨物列車に乗り込み、そこで合流したレオンとともに研究所からの脱出に成功した。

最後は彼らの目の前でG生物の最終形態が列車に迫るものの、レオンとクレアの奮闘によってこれを粉砕し、ラクーンシティから辛くも生還を果たす。物語の結末では、レオンは当局に保護されたシェリーを安心させ、「自分は市警を辞めてでもこの事件の真相を追い続ける」決意を語る。一方、兄クリスの行方を追うクレアは新たな旅立ちを示唆し、『バイオハザード2』の物語は幕を閉じる。

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舞台設定:ラクーンシティと主要ロケーションの描写

本作の舞台となるラクーンシティ (Raccoon City)は、中西部に位置する架空の工業都市であり、前作『バイオハザード』の舞台となったアークレイ山地洋館事件の影響下にある都市である。

物語は1998年9月下旬のラクーンシティで発生したバイオハザード(生物災害)事件を描く。前作の洋館事件から約2か月後、市内では奇怪な暴動や感染症が広がり始め、ついに9月下旬にT-ウィルスが大量拡散して市民の大半がゾンビ化するパンデミックに至った。このラクーンシティ事件(後に「ラクーンシティ破壊事件」と呼称)は前代未聞のバイオハザードとして、市全域を巻き込む惨劇となった。

本節では、本作の主なロケーションであるラクーンシティ市街、ラクーン警察署、下水道、地下研究所の設定と描写について詳述する。

ラクーンシティ市街地の惨劇

ラクーンシティはアンブレラ社の製薬施設や関連事業所によって経済的に支配された地方都市であった。表向きは平和な町であったが、1998年夏頃から奇妙な失踪事件や猟奇的な殺人事件が頻発し、市民の間に不穏な空気が漂っていた。

それは前作『バイオハザード』で明るみに出た洋館事件(アンブレラの極秘研究所でのT-ウィルス漏洩事故)の延長線上にあり、アンブレラ社は事件のもみ消し工作を図る一方で新たな生物兵器研究を進めていたのである。

9月中旬、アンブレラ社はG-ウィルスを巡る内部抗争に端を発し、ウィリアム・バーキン博士から極秘裏にG-ウィルス試料を強奪する作戦を決行した。しかしこの強奪作戦の過程でT-ウィルス試料が下水道に流出し、ネズミを媒介に市内の水道網へウィルスが拡散してしまった。

9月23日ごろから市内各地で原因不明の暴動や凶悪事件が多発し、市民たちは「暴徒」化した人々に襲われる事態となった。実際には既に水源や下水から感染が広がり、多数の市民が潜在的にT-ウィルスに侵されつつあったとされる。

市当局は非常事態宣言を出し警官隊を総動員して対応したが、市街地各所で暴徒(実際にはゾンビ)に対する制圧は困難を極めた。

9月26日にはついに市内に無数のゾンビが溢れかえり、街は完全なパニック状態に陥った。日没までに治安は崩壊し、ラクーンシティは死者が徘徊する地獄と化したのである。

この過程では、ラクーンシティ警察と行政当局の混乱も悲劇を拡大させた要因であった。先述の通り、市警察署長ブライアン・アイアンズはアンブレラ社から多額の賄賂を受け取っており、洋館事件の真相究明を妨害していた人物である。

彼は9月24日頃から意図的に警官隊の指揮を錯乱させ、全警官に対し署内の武器弾薬を分散配置するよう指示したうえ、非常時の脱出ルートとなり得る経路を封鎖してしまう。これらの妨害行為によって警察の対応は著しく遅延・混乱し、結果的に9月26日の大量ゾンビ襲撃で警察署は陥落、多数の警官と避難民が犠牲となった。

アイアンズ自身は混乱の中で正気を失い、避難していた市民(市長の娘)をも手にかける狂気を見せた。彼の日記には「街の人間を一人残らずブッ殺してやる!!」という戦慄すべき言葉さえ記されており、事件の只中で完全に殺人鬼へと転じていたことが窺える。

以上のように、ラクーンシティ市街地ではアンブレラ社の研究所事故とそれを隠蔽しようとする者たちの思惑が複雑に絡み合い、未曾有のバイオハザードが引き起こされたのである。

ラクーンシティ警察署(R.P.D.)

ラクーンシティ警察署 (Raccoon Police Department) は、市内唯一の警察署であり本作前半の主な舞台となる建物である。実はこの建物は元々美術館を改装したもので、地上3階・地下1階構造の古風な洋館様式を特徴とする。

豪奢な大理石のエントランスホールや数々の美術品が配置された内装は、警察施設というより博物館じみた雰囲気を醸し出している。また館内にはトランプのスート(スペード・ハート・ダイヤ・クラブ)の紋章をあしらった鍵で開閉する扉や、美術品を用いた仕掛け扉など独特のパズル要素が点在する。

これらはゲーム的演出として配置されたギミックであるが、設定上は「元が美術館なので奇妙な仕掛けが残っている」という体裁が取られている。

物語開始時、R.P.D.は既に機能不全に陥っていた。9月26日の大量ゾンビ襲撃の際、署内で多数の警官が殉職または負傷し、生存者はわずか数名という状況であった。新人警官レオンや民間人のクレアが到着した29日には、彼らを出迎えた警官マービンを除き、ほとんどの署員は死亡またはゾンビ化している。

プレイヤーは荒れ果てた署内を探索しながら、要所で当時の警官たちが残した報告書や日記を発見できる。例えば「作戦報告書1」には、9月26日に署が奇襲を受けた際の状況と、直前に署長の指示で武器庫の弾薬を全館に移動していたこと、それにより弾薬確保が困難になった旨が記録されている。

作戦報告書2」には9月28日未明に至るまでの警官生存者たちの奮戦が綴られており、もはや残存者が4名のみとなった彼らが最後の望みを託して下水道からの脱出計画を立案する様子が記されている。この報告書には「東オフィスの地下通路扉に鍵を掛け、西オフィスに鍵を隠した。クリーチャー(ゾンビ)に知性はないので見つからないだろう」という記述もあり、実際にゲーム中でプレイヤーはその鍵(クラブの鍵)を西側オフィスで発見することになる。

このように、警察署には当時の惨劇を物語る数々のファイルが散在しており、プレイヤーはそれらを読むことで事件の背景を追体験できるようデザインされている(ファイルの詳細分析は後述)。

ゲーム内で警察署は前半の探索の中心であり、多彩なイベントの舞台となる。主人公たちは署内でさまざまな人物と出会い、また怪物の襲撃に晒される。レオン編では、署内に潜伏していた報道記者ベン工作員エイダとの出会いが描かれ、クレア編ではアイアンズ署長少女シェリーとの関わりが展開する。

また署内には、屋上に墜落したヘリコプターの炎による通路寸断、天井から突然降下してくる新型クリーチャー「リッカー」など、プレイヤーを驚かせる演出が随所に用意されている。リッカー(Licker)は本作で初登場した恐るべきクリーチャーであり、壁や天井を這いまわり、長大な舌で獲物を貫く能力を持つ。

9月27日に署内で初めて目撃されたこの生物は、ある警官の追加報告に「皮膚のただれた舌の長い未知の生物」として記録されている。リッカーはシリーズを代表するクリーチャーの一つとなり、本作序盤の緊張感を象徴する存在となっている。

ラクーンシティ下水道

ラクーンシティの地下には大規模な下水処理施設が広がっており、警察署地下からアンブレラ社の研究所へと通じる経路が存在する。本作の中盤、主人公たちは警察署からの脱出を図る中でこの下水道区画へと足を踏み入れる。

下水道は暗く閉鎖的な迷路空間で、至る所に廃棄物と汚泥が堆積している。このエリアでは、水中に潜むゾンビや巨大なクモ型B.O.W.(巨大クモ生物兵器)、そして特筆すべきは巨大なワニ(巨大化したアリゲーター)が登場する。

巨大ワニは下水処理場に投棄された実験動物が突然変異して怪物化したもので、ゲーム中ではクレア編・レオン編いずれかのシナリオでボス的存在として出現する。このワニに対しては銃撃よりも環境を利用した撃退法(ガスボンベを噛ませてから射撃し爆殺)が用意されており、当時プレイヤーに強い印象を残した場面である。

下水道区画にはアンブレラ社の秘密施設への連絡通路が隠されており、脱出を急ぐ主人公たちはその存在に気付かず深部へ降りていくことになる。下水施設内でもいくつかのファイルが発見でき、例えば「下水道管理人の日誌」には下水処理プラント職員の日常と、彼が出会った奇妙な技師トーマスの様子が綴られている。

日誌によればトーマスという老人はチェスが趣味で、彼が設計したチェスの駒型の鍵が下水処理施設の扉に使われていると記される。実際、ゲーム内でもプレイヤーはキング・クイーンなどチェスの駒を象ったプラグキーを集めて扉を開錠することになる。

さらに日誌は9月上旬時点で既にトーマスや書き手の管理人自身に体調不良(皮膚のただれや食欲異常)が生じていたことを示唆して終わっており、地下で静かにウィルス感染が進行していた事実を示している。

このように下水道セクションは、物語の中継地点であると同時に環境ストーリーテリングによって事件の背景を語る場ともなっている。

アンブレラ社・地下研究所

物語の終盤で舞台となる地下研究所(通称:NEST)は、ラクーンシティ郊外に位置するアンブレラ社の極秘生物兵器研究施設である。表向きは廃工場やごみ処理場に偽装された地下深くに広大な研究区画が広がっており、ウィリアム・バーキン博士がT-ウィルスやG-ウィルスの開発を推進していた中枢拠点である。

本施設は前作のアークレイ研究所爆破後にアンブレラ米国支部の主力研究拠点となっており、バーキン博士はここで新型のG-ウィルス創製に没頭していた。しかし9月下旬、G-ウィルスを狙うアンブレラ特殊部隊の襲撃とその際の惨事(T-ウィルス漏洩)によって、研究所は内部から崩壊してしまう。

主人公たちが到達した時点で所員たちは既にゾンビ化またはクリーチャー化しており、施設内には無数の実験生物が徘徊する危険地帯と化していた。

ゲーム上、研究所エリアは謎解きと戦闘の集大成として設計されている。研究所に入ると、プレイヤーはまず所内の電力を復旧させるためのヒューズ生成パズルに直面する。また、生体実験室では植物型B.O.W.「プラント43」(通称イビー)が行く手を阻み、冷却実験室では化学薬品の調合手順を理解してワクチン素材を作成する必要がある。

クレア編の場合、上述したG-ウィルスの抗ウィルス剤ワクチン「DEVIL」をこの施設で合成する展開となる。研究所では幾つか注目すべき資料も発見できる。たとえば「P-εガス報告書」は、脱走したB.O.W.(生物兵器)を無力化するための特殊ガス兵器に関する報告書であり、ガスの効果と副作用について述べられている。

この報告書は所内の警備チームが非常時に備えてB.O.W.抑制ガスを配備していたことを示し、アンブレラ社が生物兵器事故の危険を把握していたことを示唆する内容となっている。他にも「研究所セキュリティマニュアル」や「ユーザー登録記録」など、アンブレラ社の内情を伺わせるファイルが散見され、世界観に厚みを与えている。

研究所エリアのクライマックスでは、物語の元凶であるウィリアム・バーキン(G生物)との決戦が描かれる。G-ウィルスを投与したバーキンは自我を失い、断続的に5段階もの異形の姿へ進化しながら研究所内を徘徊している。

プレイヤー(レオンやクレア)は物語の進行に応じて数度にわたりこのG生物と戦うことになる。特に最終局面では、自己破壊が進行する施設からの脱出途中でG生物最終形態が襲来し、可搬式列車上での最後の戦闘となる。

G生物は巨大な肉塊と化しもはや銃火器が通用しない存在だが、間一髪でクレア(またはレオン)の機転により撃退される演出となっている。研究所が大爆発する中、主人公たちは列車で地上へ脱出し、本作の幕が下りる。

なお地下研究所の崩壊後、ラクーンシティ自体も同年10月1日に米軍による「滅菌作戦」(核ミサイル爆撃)によって壊滅する運命にあるが、それは本作の直接の範囲外であり、次作『バイオハザード3』にて描かれている。

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ゲーム内ファイルの翻訳と考察

『バイオハザード2』では、ストーリー理解を深める多くのファイル(書類)がゲーム内に散りばめられている。日記や報告書、メモといったファイルは、プレイヤーがそれらを読むことで過去に何が起きたかを推測させる役割を果たしている。

本節では、物語考察上とりわけ重要なファイルをいくつか取り上げ、その内容の翻訳と背後に読み取れる意味を考察する。

【完全保存版】バイオハザード2 ファイル全集/研究記録・日記・メモ・報告書を完全網羅
ゲーム内に散りばめられた“ファイル”は、ただの読み物ではない。そこには都市崩壊の背景、アンブレラ社の陰謀、そして市民や警察官の小さな日常が刻まれている。『バイオハザード2』のファイルは、プレイヤーに探索の動機を与えると同時に、物語の裏側を語...

警察関係者の記録:惨劇の断片

ラクーン警察署内では、事件当時の警官たちが残した複数の報告書や日誌が発見できる。先に触れた「作戦報告書1・2」は代表例であり、警察内部で何が起こっていたかを克明に伝えてくれる重要資料である。

作戦報告書1には9月26日の襲撃時に通信が途絶し孤立した状況で警官たちが弾薬確保に奔走する様子が描かれている。特筆すべきは署長アイアンズの指示として「テロ対策」の名目で武器を分散させたことに言及しており、これが結果的に警官たちの防衛を阻害したという悔恨が記録されている点である。

続く作戦報告書2では9月28日時点で生存者が4名(執筆者エリオットを含む)にまで減ったこと、彼らが下水道経由での脱出計画を立てたものの「ゾンビに知能がないのを幸いに、地下通路の鍵を西オフィスに隠した」ことなどが綴られている。

これら報告書は単なるアイテム以上に物語背景を雄弁に物語っており、プレイヤーに警官たちの最期を想起させる効果を持った。実際、劇中で西オフィスからクラブの鍵を入手し地下通路を開いた際、エリオットら数名は既に計画実行中に死亡したことが推測できる。

このように断片的な文章から惨劇の全体像を組み立てる体験は、本作の物語考証を深める上で不可欠である。

警察署関連のファイルでもう一つ注目すべきは、署長アイアンズとその秘書の残した日記である。署長自身の書いた「署長の手記」(Chief’s Diary)は、彼の狂気の深まりを如実に示す記録だ。その9月23日付のページには次のようにある。

9月23日
もうお仕舞いだ。アンブレラの奴等は私の街をメチャクチャにしやがった!じきに街はゾンビだらけになる。私だって感染しているかも分からない。こうなったら街の人間は、一人残らずブッ殺してやる!!

この一節からは、アイアンズがアンブレラ社に対する逆恨みと、自身も感染したかもしれないという恐怖から、市民への無差別殺戮を企図するに至った異常心理が読み取れる。

実際、彼はその後、生存者狩りに乗り出し、9月26日付の手記では警官エドを背後から射殺して悦楽する描写や、市長の娘を「新たなトロフィー」にすると記している。署長秘書の日記A/Bもまた興味深い資料で、客観的な部下の目線から署長の奇行が記録されている。

秘書A(4月6日付)には「署長室の石像をうっかり動かしたら烈火のごとく怒られた」「署長の収集する美術品は悪趣味で、どこから資金が出ているのか謎だ」とあり、賄賂による裏金で美術品を買い漁るアイアンズ像が浮かび上がる。

さらに秘書B(6月8日付)では「署長が凄い形相で部屋に飛び込んできた」「2ヶ月で2度目、前回(石像事件)より酷い怒りようで殺気を感じた」と述べ、6月15日付には「署長の秘密を知ってしまった。バレたら命が危ない…今日は遅いので明日が来てほしい」と不穏な言葉を最後に日記が途切れている。

この秘書Bの日記からは、秘書が署長の邪悪な秘密(おそらく賄賂や猟奇行為)を知り命の危険に晒されたこと、そして実際彼女がその後どうなったかは語られず読者の想像に委ねられることになる。ゲーム的にはその答えは署長室での市長令嬢の遺体という形で示唆されるのみであり、プレイヤーは日記を読むことでより一層背筋の寒くなる思いをするのである。

クリス・レッドフィールドの手記と調査報告書

バイオハザード2』では、前作の主人公クリス・レッドフィールドの動向を伝えるファイルが重要な役割を果たしている。クレア編でS.T.A.R.S.オフィスを調べると入手できる「クリスの手記」は、洋館事件後にクリスが記した日記であり、本作冒頭で彼が不在である理由を示すキーアイテムだ。その内容を訳すと以下の通りである。

8月8日
今日も署長にかけ合ったが、やはり信じてくれない。アンブレラがあの洋館で恐ろしいT-ウィルス実験をしていたのは間違いないのだ。T-ウィルスに感染すると人間はゾンビになってしまう。だが洋館は爆発してしまって証拠が残っていない。その上、この町はアンブレラの薬品工場で成り立っているようなもの、町の人間は恐れて誰も口を開かない・・・どうしたらいいのだ。
8月17日
最近、おかしな事件が続発している。夜中、町のあちこちで見たこともない化け物が出現するというのだ。アンブレラが再び動き出したに違いない。
8月24日
ジル・バリーと協力して、ついに情報を掴んだ。アンブレラはT-ウィルスに代わる新しいG-ウィルスの研究に乗り出したというのだ。G-ウィルスとは一体どんなものか?とにかく3人で相談し、極秘で捜査するためにアンブレラの本拠があるヨーロッパへ飛ぶことにした。妹には連絡しない。危険にさらしたくないからだ。許してくれクレア。

この日記からは、前作『1』の洋館事件の後もクリスらS.T.A.R.S.メンバー(ジル・バレンタイン、バリー・バートン)が独自にアンブレラ社の調査を続けていたこと、しかし警察上層部(署長)が協力しないため秘密裏に行動していたことが読み取れる。

また8月17日の項には「町で化け物出現の報告が相次いでいる」とあり、前述の市街地モンスター騒動(トーマスやジョージらの感染例や、病院の異常事態)と符号する。極め付けは8月24日の項で、クリスたちがG-ウィルスの存在を掴み、ヨーロッパのアンブレラ本社調査のため旅立ったことが記されている。

さらに「妹(クレア)には敢えて知らせない。危険に巻き込みたくないからだ」とあり、クレアが兄の消息を求めてラクーンシティに来る動機とすれ違いが劇的に描かれている。この一文「許してくれクレア(Please forgive me Claire)」は、クレア編で本ファイルを読んだ際にプレイヤーに強い感慨を与える印象的な一節である。

要するに、クリスは妹想いの兄ゆえにクレアに知らせず単身で戦いに赴いたということが、クレアにはこの日記を読むまで伝わらなかったのである。本手記はゲーム的に見ればアイテムの一つにすぎないが、物語上は前作から続くストーリーラインを接続し、主人公クレアの感情に訴える重要な役割を果たしている。

もう一つ、クリス関係のファイルで見逃せないのが「クリス宛ての調査報告書」である。これは警察署のFAX受信機から出力される文書で、事件勃発前にクリスが依頼した内部調査の結果を伝える連邦警察からの報告書である。

内容は(1) G-ウィルスについて(2) アイアンズ署長についての二点に分かれて記され、要約すると以下の通りである。

  • G-ウィルスに関して
    • 現時点でその存在は確認されていない。引き続き捜査中。
  • アイアンズ署長に関して
    • 過去5年間に渡りアンブレラ社から多額の賄賂を受領していた疑惑。彼は洋館事件ほか複数の事件隠蔽に関与した模様。また大学時代に二度のレイプ容疑で逮捕歴があり、精神鑑定も受けている(成績優秀のため不起訴処分)。彼に対して行動の際は十分注意されたし。

この報告書は警察内部の腐敗を直接的に暴露するものであり、プレイヤーはこれによってアイアンズ署長への不信感と警戒心を抱くことになる。事実、本編中でクレアがアイアンズと初対面する直前にこのFAXを読む構成になっており、彼の異常性がプレイヤー視点で予見される仕掛けとなっている。

またクリスが独自にこうした調査を進めていたことで、彼が確固たる証拠を掴みつつあったこともうかがえる(もっとも彼は既に町を離れていたため、この報告書が彼自身の目に触れることはなかった)。日本語版でも文章冒頭に「連邦警察局・内務調査報告書 ラクーン市警S.T.A.R.S.隊員 クリス・レッドフィールド殿」とあり、クリス宛てのFAXであることが示されている。

このファイルはタイミング的にも絶妙で、物語前半の山場であるアイアンズ署長との対決にリアリティと説得力を持たせた。また、前作『1』からプレイしているファンには「やはり市警上層部は黒幕だったか」という形で物語の大きな伏線回収となり、シリーズの連続性を感じさせる演出となっている。

G-ウィルス研究とアンブレラ社に関する記録

本作のキーワードであるG-ウィルスに関連しても、いくつかの興味深いファイルが存在する。代表的なものに「G生物に関する報告書」(Nintendo64版のEXファイル)や前述の研究所内ファイルが挙げられる。もっともゲーム本編(PS版)で直接G-ウィルスの性質に触れたファイルは少なく、むしろそれは物語中のキャラクター会話(アネットやエイダの説明)で語られる。

しかし関連資料として、当時の攻略本や開発者インタビューではG-ウィルスの設定が詳細に語られており、その一部は後年の作品やリメイクでも踏襲された。

例えば、G-ウィルスは「感染生物を環境に適応した新種の生命体に進化させる」というコンセプトであり、自己増殖による繁殖(胚を植え付け近親者を媒介に増える)機能を持つ点がT-ウィルスとの決定的な違いである。

その一方で、G生物は理性を完全に失うため兵器として制御不能であり、アンブレラ社にとっても諸刃の剣であった。このような設定情報は、ゲーム中で直接読めるファイルには明記されないものの、開発側が用意した内部資料として存在している(実際Nintendo64版では「母体ウィルスレポート」等EXファイルで補完された)。

本作のファイル群全体を通じて言えるのは、断片的なテキストがプレイヤーに想像と思考の余地を与える巧みな設計になっている点だ。警察署の惨劇、署長の狂気、ウィルス研究の断片など、プレイヤーは集めた文書を自らつなぎ合わせながら事件の全貌を解き明かす楽しみを味わう。

それはゲームプレイと物語理解を有機的に結び付け、単なる映像では得られない没入感をもたらす。学術的に見ても、これらファイル類はゲームにおける環境叙事詩の優れた実践例であり、プレイヤーが能動的にストーリーの補完作業に参加する点でインタラクティブな物語体験を提供していると評価できる。

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G-ウィルスとアンブレラ社の研究設定

本作の物語核であるG-ウィルスと、それを巡るアンブレラ社の暗躍について考察する。本節では、G-ウィルスの生物学的特徴・設定と、アンブレラ社内での政治劇、およびそれがラクーンシティ事件に及ぼした影響を整理する。

コウ
コウ

「1」のウィルスやアンブレラ関連の話が中途半端な形で終わるから、そのへんの話の補完が本作で深堀りされてるのが評価されている。

G-ウィルスとは何か:生物兵器の新たな段階

G-ウィルスは、アンブレラ社のウィリアム・バーキン博士によって開発された新型の有機生命体用ウィルスである。前世代のT-ウィルスが「感染者をゾンビなど凶暴化させるだけ」であったのに対し、G-ウィルスは宿主の遺伝情報を書き換えて急速な進化(突然変異)を促す点で異質である。

感染体(G生物)は環境に適応する形で全く別種の生命体に次々と形態変化していき、驚異的な生命力・再生能力を獲得する。

またG生物には独自の繁殖方法があり、自らの近親の遺伝子を持つ生物を本能で見分け出し、その体内に胚を植え付けて増殖しようとする。ただし適合しない宿主では胚が拒絶反応を起こし、体内で急成長したG幼体が宿主を食い破って飛び出す(=新たなG生物の誕生と宿主の死亡)という恐るべき結果となる。

この一連の現象は劇中でも描かれ、ベン・ベルトリッチ記者がウィリアム(第2形態)に胚を植え付けられた際、彼の体から新たなG生物が孵化し胸を突き破って出現した。一方、バーキン博士の娘シェリーの場合、彼女はバーキンと遺伝的に近いため適合し、クレアによって抗Gワクチンを投与されなければ完全なG生物に変異していた可能性が高い。

以上の設定から明らかなように、G-ウィルスはT-ウィルスに比べて遙かに制御不能かつ危険な代物である。軍事兵器として見た場合、宿主が意思を失う上に標的無差別に繁殖するため使いどころが難しく、アンブレラ社内でも意見が割れるところであった(実際、G生物の軍事利用は設定上も未成功に終わっている)。アネット・バーキンも劇中「Gは誰にも制御できない」と語っており、ウィリアム博士自身がGの最初の犠牲者となった皮肉もそれを証明している。

興味深いのは、G-ウィルス開発の経緯にアンブレラ社上層部の思惑が絡んでいる点である。洋館事件後、アンブレラ創設者の一人オズウェル・E・スペンサー卿らは、バーキン博士のG-ウィルス研究に期待を寄せつつも、その野心を警戒していたと資料に示唆される。表向きバーキンに研究の自由を与える一方、彼が完成させた暁には権力掌握のため奪取する腹積もりだったことがうかがえる(実際にそれが特殊部隊襲撃として実行された)。

一方バーキン博士もまた、研究成果を引っ提げてアンブレラを離反し政府や軍と直接取引する算段を立てていた。つまりG-ウィルスは単なる科学上の賜物ではなく、権力闘争の駒でもあったのである。ラクーンシティ事件は突き詰めれば、このG-ウィルスを巡る人間同士の強欲と猜疑が引き起こした惨事とも言える。

アンブレラ社は当初からウィルス漏洩を想定し非常手段も用意していたようだが、結果的に最悪の形でそれが現実化してしまった点に企業としての驕りが見て取れる。

アンブレラ社の暗躍とHUNK部隊

アンブレラ社は、本作においては黒幕的存在として直接の登場は控えめだが、その影は全編にわたり色濃く投影されている。

ラクーンシティにおける同社の影響力は絶大で、市長や警察上層部を買収することで事実上都市を私物化していた。前述のアイアンズ署長の腐敗もその一端であり、市長(マイケル・ウォーレン)は事件発生直後に市外へ逃亡している。また事件の遠因となった特殊部隊U.S.S.アルファチーム(隊長HUNK)は、アンブレラ社が秘密裏に擁する私設精鋭部隊である。HUNK以下4名の隊員は9月22日深夜に研究所へ侵入しバーキン博士を急襲した。

彼らは任務遂行中にバーキンの反撃で全滅(HUNKのみ生存)するが、その結果がT-ウィルス漏洩とラクーンシティ壊滅であった。この一連の過程は本編中では直接語られず、隠しミニゲーム「the 4th Surviver」でHUNKの脱出劇として体験できるのみである。しかしゲーム内ファイル「G報告書」や一部シナリオでの断片的描写から推察可能であり、プレイヤーに裏事情を想像させる要素となっている。

アンブレラ社の暗躍でもう一点注目すべきは、事件後半の対応である。ラクーンシティのバイオハザードが手に負えない規模に拡大すると、アンブレラは事態収拾のため私設傭兵部隊U.B.C.S.を送り込むが(※これらは『バイオハザード3』で描写)、一方で事件の証拠隠滅を図る動きも見せる。

最終的にラクーンシティは10月1日アメリカ政府の手で消毒(核爆破)されるが、その背後にアンブレラの政治工作があったことは示唆されている。もっとも、結果的にアンブレラ社はこのラクーン事件の責任を問われ国際的に信用を失墜し、数年後には崩壊の道を辿ることになる。G-ウィルスもまた表舞台に出ることなくアンブレラと運命を共にしたと言える(ただしシリーズ作『バイオハザード リベレーションズ2』などでG-ウィルスの試作株が別組織に悪用されるエピソードが存在する)。

いずれにせよ、『バイオハザード2』はアンブレラ社の研究開発とその軍事転用が生んだ惨禍と、それに振り回される人々を克明に描いた作品であり、企業の倫理なき追求が招くバイオテクノロジーの負の側面を物語の根底に据えている。

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初代『バイオハザード』との繋がり

バイオハザード2』はシリーズ第二作であり、物語的にもゲームデザイン的にも前作から多くの要素を継承・発展させている。本節では、前作『バイオハザード』(1996年発売)とのストーリー上・構造上の繋がりについて言及する。

物語上の連続性

物語面では、前作ラストから2か月後という直接的な続編となっている。前作の主人公クリス・レッドフィールドジル・バレンタインは本編に登場しないものの、その後の行動がファイルや台詞で示唆され、間接的な登場を果たしている。

とりわけクリスは先述のように日記や調査報告書で存在感を示し、妹クレアの来訪動機にもなっている。ジルについては直接の言及は少ないが、クリスの日記で名前が登場し(8月24日項に「ジル・バリーと協力して…」)、彼女もまたアンブレラ追及に動いていたことが示される。

また、前作でアンブレラ研究員だったジョン・クレイマーが残した手紙に登場した「エイダ」という名が、本作ではエイダ・ウォンというキャラクターとして登場した。これはファンにとってニヤリとする接続点であり、実際エイダは自分の偽名(ジョンの恋人)に触れられると動揺する仕草を見せ、前作の設定を踏まえた演出がなされている。

さらに、S.T.A.R.S.隊員たちのその後も一部補完されている。前作の洋館事件報告書は警察署内では発見されない。これはアイアンズ署長が握り潰したためで、本作でその隠蔽工作が明かされている。一方、N64版の「EXファイル」では、ジル・バレンタインが残した「ジルの報告書」が追加され、彼女がいかに洋館事件後クリスらと連携しヨーロッパ行きを決めたかが明文化されている。

これら細部からも、『2』の物語が『1』と地続きであることが丁寧に作り込まれているのが分かる。

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最後に

バイオハザード2』は、その緻密なストーリー構成、重厚な舞台設定、魅力的なキャラクター描写、そして巧みな資料提示による物語補完によって、単なる娯楽を超えた深みを持つ作品となっている。

ラクーンシティという架空都市で起きた惨劇は、アンブレラ社の企業倫理の欠如や人間の狂気といったテーマを内包し、ホラーゲームでありながら社会的寓意を読み取ることも可能である。本稿の学術的考察を通じて浮かび上がったのは、本作が綿密な設定考証とゲームデザインの融和によってプレイヤーに強い没入体験を提供している点である。

A/B二部構成のシナリオは論文でいえば二重構造の叙述トリックにも喩えられ、プレイヤーは二度プレイすることで初めて真相に到達するよう設計されている。また作中のファイル群は一次史料のように機能し、断片から全体像を再構築する能動的体験を促す。

開発史に目を向ければ、大胆な路線変更と洗練されたリライトによって作品が研ぎ澄まされていった過程があり、それ自体ゲーム制作研究の好例と言える。発売から年月を経ても色褪せない『バイオハザード2』の評価は、時代を超えたエンターテインメント性と完成度の高さに裏打ちされている。

現代のホラーゲームが当たり前のように持つ映画的演出シネマティックな物語は、本作が提示した一つの到達点から多くを学んだ。このように、『バイオハザード2』はホラーゲームの可能性を拡張し、シリーズとジャンルの未来を切り拓いた意義深い作品であると言えよう。

今後も本作へのさらなる研究と分析が進み、ゲーム史におけるその価値が一層明確になることを期待して、本稿の結びとしたい。

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