『クリス・レッドフィールド』とは?

クリス・レッドフィールドは、初代『バイオハザード』から最新作まで登場するシリーズ屈指のメインキャラクター。
ラクーン市警特殊部隊S.T.A.R.S.の隊員として物語に登場し、その後は国連直轄の対バイオテロ組織「BSAA」に所属して各地の事件に関わって来る。シリーズ開始当初は25歳だったが、最新作『バイオハザード ヴィレッジ』の時点では50歳手前にまで年齢を重ねている。
年を取ってなおその熱意と頼もしさは健在で、長年の戦いで培った経験と実績はまさに生ける伝説と言える存在。この記事では、そんなクリス・レッドフィールドの人物像や性格の特徴、そして各作品ごとの活躍や成長の軌跡を、時系列に沿って振り返ってみよう。

「5」以降のクリスは、人の力を超えたゴリラ並みのパワーを披露することが多く、ファンの間からは「ゴリス」と呼ばれることも。それも彼が愛されている証拠だろう。
S.T.A.R.S.時代:洋館事件でのクリス(『バイオハザード1』)

クリス・レッドフィールドの物語は、洋館事件とも呼ばれる初代『バイオハザード』(1996年発売)から始まる。ラクーン市警の特殊部隊S.T.A.R.S.アルファチームに所属するクリスたちは、郊外で起きた奇妙な連続事件の調査中に洋館へと迷い込む。
この時クリスは25歳の若き隊員で、同僚のジル・バレンタインや上司のアルバート・ウェスカーらと行動を共にしていた。洋館内部で待ち受けていたのはゾンビや怪物の群れと恐るべき生物兵器の数々。クリスは持ち前の勇敢さと射撃の腕前で仲間と協力しながらこの死地を切り抜けて行く。

洋館事件当初のクリスは、正義感の強い熱血漢そのものだった。怪奇現象に動揺しつつも「自分が皆を守るんだ!」という強い責任感で行動し、危険に飛び込んでいく姿が描かれる。物語終盤、クリスたちはこの洋館の背後に製薬企業アンブレラ社の違法な生物兵器研究があることを突き止める。
さらに、信頼していたウェスカー隊長が実はアンブレラのスパイだったという衝撃の事実も発覚する。ウェスカーは究極の生物兵器タイラントを放ちクリスを抹殺しようと企むが、クリスはジルたちと協力してタイラントを撃破し、間一髪で洋館から脱出することに成功した。
この初めての壮絶な戦いを経て、クリスの中にはアンブレラ社への激しい怒りと使命感が芽生える。表向きは大企業ながら裏で生物兵器を開発し、ラクーン市や隊員たちの人生を狂わせたアンブレラを必ず法の下に裁く——クリスはそう心に誓った。
洋館事件後、彼はラクーンシティ警察を離れ、単身でアンブレラ社の実態を暴くための戦いに乗り出していくことになる。
このため、翌年に起こったラクーンシティ壊滅事件にはクリスは直接関与していないが、クリス捜索のために同市に訪れた妹クレアがラクーン事件に巻き込まれることになってしまう。(クリスは妹に危害が及ばないようにあえて連絡を絶っていた。

クレアの件からもクリスは優しさを持つ人物だが、その反面を不器用さも持ち合わせていると言え、彼の人間臭さが出ておりそこが魅力的。
妹クレアの救出と宿敵との再会(『CODE: Veronica』)

洋館事件から数か月後、クリスはある緊急事態に直面する。実の妹クレア・レッドフィールドが兄を捜す途中でアンブレラ関連施設に拘束されてしまったのである。
2000年発売の『バイオハザード CODE: Veronica』(コードベロニカ)では、クリスは妹救出のため南海の孤島ロックフォート島へ向かう。クレアは脱出に成功しクリスとは一時すれ違いになるが、クリスは島と南極基地で次々に襲い来るB.O.W.(有機生命体兵器)に立ち向かい、最終的にこの事件の黒幕であるアレクシア・アシュフォードを打倒した。
ロックフォート島での戦いは、クリスにとって因縁の宿敵との再会の場ともなった。それは、洋館事件で死んだはずのアルバート・ウェスカーだった。ウェスカーは超人的な力を得て陰謀を巡らせており、クリスとクレアの前に再び立ちはだかる。

再会したウェスカーは「貴様を倒すために戻ってきた」と言わんばかりの執念を見せ、クリスも激しい怒りを燃やす。二人の因縁はこの後もシリーズを通じて続いていくことになるが、コードベロニカの時点では決着はつかず、ウェスカーは不敵な笑みを浮かべ姿を消した。
この一連の事件で、クリスの守るべきものは一層はっきりしていく。クレアという大切な家族を救うために命を懸けて戦い、そして自分たちを苦しめるウェスカーという宿敵の存在を改めて胸に刻む結果となった。正義感ゆえに熱くなりがちな面は相変わらずだが、妹を想う兄らしい優しさや、人類全体の脅威に立ち向かう責任感もより強固になって行く。

なんとこの作品でのクリスは絶壁をよじ登って登場するというパワフルさを見せつけており、この辺りから「ゴリス」の片鱗が見え始めている。
アンブレラ崩壊とBSAA設立への道(『アンブレラクロニクルズ』)

ラクーンシティ壊滅事件(1998年)やコードベロニカ事件(同年末)を経て、アンブレラ社は徐々に社会的に追い詰められて行った。しかし依然として各地に隠されたアンブレラの研究施設や生物兵器の脅威は残っていた。クリスと盟友のジル・バレンタインは、執念をもってアンブレラ壊滅に向けた戦いを続けた。
2007年発売のスピンオフ作品『アンブレラ・クロニクルズ』には、2003年時点のクリスとジルの任務が描かれている。ウェスカーからもたらされた新型B.O.W.開発に関する情報を基に、クリスとジルはロシア政府が極秘に編成した対アンブレラ部隊に合流し、シベリアのアンブレラ施設への強襲作戦に参加した。

ここで二人はアンブレラ最後の切り札であった生物兵器「T-A.L.O.S.」を撃破し、施設の破壊に成功する。このロシアでの戦いにより、長年暗躍していたアンブレラ社はついに崩壊に追い込まれた。
アンブレラ崩壊後、クリスたちは戦いを終わらせるどころか、新たな使命を胸に動き始める。アンブレラとの戦いで得た経験や反省を活かし、「同じ悲劇を繰り返さない」ための組織作りが求められた。
こうして誕生したのが、『BSAA(Bioterrorism Security Assessment Alliance, 生物テロ安全評価連盟)』。元は対アンブレラ私設部隊だったものを国連直轄の正式組織へと再編したもので、クリスは創設メンバー11人(オリジナル・イレブン)の1人に名を連ねた。BSAAは各地で発生するバイオテロやB.O.W.事件の鎮圧・調査を任務とし、クリスはエージェント兼隊長格として精力的に活動を開始する。
この頃のクリスは、若手だった洋館事件当時と比べれば精神的にも成長し、いくぶん落ち着きと貫禄が出てきた。正義感の強さは相変わらずだが、感情任せに突っ走るだけでなく冷静な判断力も身に付けつつある。
もっとも、クリス自身は「自分はただ生き残っただけ、英雄なんかじゃない」と謙虚な姿勢を崩さない。しかしBSAA内部では既にクリスは伝説的存在となっており、多くの隊員から厚い信頼と尊敬を寄せられるリーダーへと成長していったのである。

久々のゴリス・ジルコンビの復活に、筆者だけでなくファンも歓喜に湧いたはず。ただ、それだけに外伝作品として発売されたのが、筆者も含め「ちょっと残念」という声も。
新たな事件と苦渋の決断(『リベレーションズ』)

BSAAの任務に身を投じる中で、クリスは幾度となく新たなバイオテロ事件に直面する。『バイオハザード リベレーションズ』(2012年発売、物語の時系列では2005年)では、地中海で発生したバイオテロにクリスが巻き込まれた。
海上の豪華客船クイーンゼノビアで暗躍するテロ組織「ヴェルトロ」復活の情報を追っていたクリスは、相棒のジェシカと共に消息不明となってしまう。クリス救出のため同僚のジルが船を調査し、途中でクリスも無事合流。
実はこの事件、BSAA上層部のオブライエンによる大胆な陽動作戦でもあった。クリスとジルは船内で協力し、陰で糸を引いていたFBC(連邦バイオテロ対策委員会)のモルガン長官の悪事を暴くことに成功する。
リベレーションズの一件では、クリスは終盤でジルと再び肩を並べて戦い抜き、パートナーとしての強い信頼関係を再確認することとなった。

しかし、クリスにとって辛い出来事も起こる。2006年、BSAA創設メンバーでもあった盟友ジル・バレンタインが、ある任務中に行方不明になってしまったのである。事件の発端は、アンブレラ創設者オズウェル・E・スペンサーの邸宅で起きた戦闘だった。
クリスとジルは宿敵ウェスカーとスペンサー邸で遭遇し激闘になるが、ウェスカーの圧倒的な力に追い詰められてしまう。そのとき、ウェスカーの攻撃からクリスをかばうようにジルが相手もろとも崖下へ落下し、行方不明となってしまう。
親友でもあるジルを失ったショックは大きく、クリスは自責の念から「自分と組んだ者は不幸になるのではないか」と思い悩み、一時は新たな相棒を持つことを避けるようになる。
ジル不在の間も、世界各地では待ってはくれず事件が起こり続けた。クリスは悲しみを胸に秘めつつ職務を全うし、バイオテロとの戦いを続ける。この頃の彼は以前にも増して寡黙でストイックになり、任務に没頭することで心の痛みを紛らわせているかのようだった。
仲間思いであるが故に大切な人を失う恐怖も知ったクリスだったが、それでも彼は「誰かが戦わなければ犠牲はもっと増える」と自らを奮い立たせる。そんな苦渋の時期を経て、ついに運命の再会が訪れることになった。
アフリカでの決戦:宿敵との因縁に終止符(『バイオハザード5』)

2009年が舞台の『バイオハザード5』では、クリスはBSAA北米支部のエージェントとしてアフリカ西部キジュジュ自治区へ派遣される。任務は違法な生物兵器取引の阻止で、現地では新人エージェントのシェバ・アローマが相棒として彼を待っていた。
当初クリスは過去のトラウマからパートナーを持つことに慎重だったが、明るく勇敢なシェバと行動を共にする中で次第に心を開いて行く。シェバもまた仲間を大切に想う強い心の持ち主であり、彼女との出会いはクリスに「再び仲間を信じよう」という気持ちを取り戻させてくれた。
キジュジュではアンブレラ社由来の新型ウィルスや寄生体プラーガによって住民が次々と怪物化し、かつてない危機的状況に陥る。クリスとシェバは協力して黒幕のリカルド・アーヴィングを追い詰め、巨大クリーチャーと化した彼を辛くも撃破。
その過程でクリスは驚くべき情報を掴む――死んだはずのジルが生きていたというのだ。ジルは敵組織に捕らわれ薬物で洗脳されており、クリスはシェバと共に苦闘の末ジルを正気に戻すことに成功する。再会を果たしたジルとの絆を胸に、クリスは事件の黒幕であるアルバート・ウェスカーとの最後の決戦に挑む。

ウェスカーは自ら開発した「ウロボロス・ウィルス」を体内に取り込み怪物と化していたが、クリスとシェバは決死のコンビネーションでこれに立ち向かう。
噴火寸前の火山地帯で繰り広げられた死闘の末、クリスは宿敵ウェスカーをついに打ち倒す。この激闘の中でクリスが岩石を拳で押し動かすという驚異のパワーを見せるシーンもあり、ファンから「さすがクリス、筋肉がゴリラ並みだ!」とネタにされるほどのインパクトを残している(このネタからクリスには「ゴリス」という愛称も生まれた)。
いずれにせよ、長年クリスの宿敵であったウェスカーとの因縁にここで決着が付き、クリス自身も大きな区切りを迎えることになる。
『5』のラスト、クリスは夜明けの中で「これで本当に戦いは終わるのか…」と呟く。アンブレラは崩壊し、ウェスカーも倒した。しかしクリスの心には、終わりではなく新たな決意が宿った。
「こんな悲劇をもう二度と繰り返さない。そのために自分は戦い続ける」と。こうして彼は改めて自らの使命に向き合い、仲間と共に戦い続ける道を選ぶ。
苦悩と再起:家族のような仲間たち(『バイオハザード6』)

『5』で宿敵を倒した後も、クリスはBSAAエージェントとして世界中を飛び回ります。2012年を舞台にした『バイオハザード6』では、彼はヨーロッパ東部の紛争地域イドニア共和国で発生したバイオテロに対処すべくアルファチームを率いて出動した。
この頃のクリスはBSAA部隊長として円熟味を増し、部下たちからは「伝説のクリス隊長」として慕われている。クリス自身も仲間を「家族」と呼ぶほど強い絆で結ばれており、部下一人ひとりに深い信頼を置いていた。
しかし、イドニアでの任務中に悲劇が起こる。クリスのチームはネオアンブレラの罠にかかり、新型ウィルスによって隊員たちが次々と怪物化させられてしまったのである。目の前で“家族”である部下たちを殺されたクリスは怒りと悲しみに我を忘れ、黒幕だと信じたエイダ・ウォンに復讐心を燃やして暴走してしまう。
最愛の仲間を奪われたことによる取り乱しようは激しく、結果としてクリスは負傷・記憶喪失に陥り、そのまま行方をくらましてしまう。
数か月後、東欧のとある酒場に酒浸りになっているクリスがいた。自分を見失ったクリスを見つけ出したのは、BSAA部下のピアーズ・ニヴァンス。ピアーズはかつての尊敬する隊長に必死に呼びかけ、クリスの記憶と戦意を取り戻させた。ピアーズの献身に応えるように、クリスは再び隊長として立ち上がり、今度は中国で発生したバイオテロの阻止に向かう。

中国での作戦中、クリスはレオン・S・ケネディやシェリー・バーキンといった他のシリーズ主人公たちとも初めて直接顔を合わせ共闘する。クリスとレオンは立場の違いや誤解から一触即発の衝突もあったが(クリスもレオンも引かず、互角の殴り合いを演じた)、最終的には互いの正義を認め協力に至った。
クリスは道中で記憶を完全に取り戻し、ネオアンブレラのC-ウィルスミサイルによる生物災害拡散計画を辛くも阻止する。しかし戦いの最中、クリスはかけがえのない相棒ピアーズを失うことになる。最終局面でピアーズが自らウィルスを投与してまでクリスを救い犠牲となったのである。クリスは目の前で散っていった若きエースを抱きかかえ悶絶した。
このシーンは、彼が背負ってきた“仲間の死”という重い十字架を改めて印象づけるものでもある。事件後、心が折れかけたクリスだったが、ピアーズの遺志を胸に「逃げるわけにはいかない」と決意を新たにする。引退をほのめかす言葉も撤回し、これからもBSAA隊長として戦い続ける道を選ぶ。
『6』のラストで新たな部下たちに迎えられるクリスの姿は、一度は迷い傷つきながらも再起した不屈の英雄の姿そのものだった。

「6」ではクリスの人間臭さがより濃く出る作品だった。システム的には賛否が分かれる作品だが、人間ドラマはかなり魅力的。
新生アンブレラと異色の共闘(『バイオハザード7』)

2017年発売の『バイオハザード7 レジデントイービル』では、物語の主人公は一般人のイーサン・ウィンターズだが、そのエンディングに意外な形でクリスが登場する。クリスはバイオテロ事件の現場に突如現れ、イーサンに愛用のハンドガン(サムライエッジ<アルバートモデル>)を投げ渡してラスボスであるエヴリン討伐を支援した。
そして、自らもヘリコプターでイーサンの救出に駆けつけ、彼を危機から救い出す。プレイヤーはこの場面で初めてクリスの姿を目にするが、彼の自己紹介のセリフは「俺はレッドフィールド」という簡潔なものだった。

この時クリスが乗っていたヘリや装備には、かつての悪の企業アンブレラのマークに青色をあしらった「Blue Umbrella(ブルーアンブレラ)」のロゴが付いていた。突如現れた“青いアンブレラ”所属のクリスに、ファンは大いに驚かされる。アンブレラを憎んでいたはずのクリスがなぜ?と戸惑う声もあったが、実際にはクリスはアンブレラに転向したわけではなかった。
ブルーアンブレラとはアンブレラ社崩壊後に元社員らが中心となって結成された新組織で、過去の贖罪としてB.O.W.対策に協力する企業体。クリスはBSAAエージェントの立場で、このブルーアンブレラに対B.O.W.戦闘のアドバイザーとして招かれていたのだった。要するに、ブルーアンブレラには自前の精鋭現場部隊がいないため、BSAAからクリスが派遣されて協働していた形である。

クリスはその後、『7』本編後日譚となる無料DLC「Not A Hero」にて主役を務め、単身で未解決だった事件の後処理に挑む。イーサンを苦しめたベイカー家の次男ルーカス・ベイカーを追跡し、彼が陰で繋がっていた闇組織への情報漏洩を阻止すべく行動した。特殊部隊らしくナイトビジョンゴーグルや最先端装備に身を包んだクリスは、次々とクリーチャーを撃破し、最後は逃亡を図ったルーカスを射殺して事件を完全解決する。
このミッションを最後にクリスはブルーアンブレラとの協働任務を終えたようで、シリーズ次作では新たな立場で登場することになった。
『7』におけるクリスは、顔つきや雰囲気が以前の作品と大きく異なっていたため「誰だか分からなかった!」という声もあった。実際モデルが一新されたこともあり一瞬別人のようだが、中身はれっきとしたクリス・レッドフィールドらしい。(筆者は未だにクリスの名を語った別人だと思っている)
長年の激闘を経て少し疲れた様子や渋みが増した印象もあるが、困っている人を放っておけない性格や任務を完遂するプロ意識は全く変わっていない。むしろ経験豊富なベテランらしい安定感が増し、「やっぱりクリスが来ると頼もしい!」とプレイヤーを安心させてくれた。
闇を背負うベテランの覚悟(『バイオハザード ヴィレッジ』)

そして2021年発売の『バイオハザード ヴィレッジ』では、クリスは物語に深く関わる重要人物として登場する。前作から引き続き主人公となるイーサンの前に姿を現したクリスだが、その登場シーンは非常にショッキングなものだった。
物語序盤、クリスはなんとイーサンの妻ミアを襲撃し射殺してしまう。それまで善良な英雄として描かれてきたクリスの突然の非情な行動に、イーサンもプレイヤーも困惑する。しかし、クリスには彼なりの作戦上の理由があった。
後に明かされるが、この時クリスが撃った“ミア”はミランダという邪悪な存在が変身した偽物だったのである。クリスは敵の策略からイーサン一家を守るため、あえて真相を伏せて単独行動でミランダの計画阻止に動いていた。

クリスは自身の率いる少数精鋭部隊「ハウンドウルフ隊」を伴い、ヨーロッパのとある偏狭な村で極秘任務を遂行する。彼の目的は、ミランダが100年以上も隠し持ってきた特異菌の根(=菌根)を爆破し、この村を巡る一連の怪異の元凶を断つことだった。
クリスは村で何度かイーサンとも遭遇するが、「お前は首を突っ込むな」と彼には真相を語らず突き放すばかりだった。この冷徹にも見える態度は、イーサンを危険から遠ざけたいがゆえの配慮でもあり、同時にクリス自身が多くの部下や仲間を失ってきた経験から「もう誰も巻き込みたくない」という想いの表れだったのかもしれない。
結果的にクリスの思惑に反してイーサンは自ら戦いに飛び込み、クリスの制止を振り切って奮闘することになる。クリスは密かに敵本拠地に潜入し爆薬を仕掛ける一方で、イーサンには敢えて最強の敵ハイゼンベルクとの戦いを任せるなど、裏方に回る場面もあった。
物語終盤、クリスはミランダに挑むイーサンを支援しようとするが間に合わず、イーサンを救うことはできなかった。それでも彼はイーサンの幼い娘ローズマリーと生存者ミアを守り抜き、任務としての目的も果たす。ミランダの野望を砕き菌根を爆破したことで、この村に巣食っていた邪悪は一掃された。

事件後、クリスは重大な事実を知る。なんと、救援に駆けつけたBSAA本部からの隊員たちが人間ではなくB.O.W.で造られた生物兵士だったのだ。自分が所属するはずのBSAAが禁忌であるB.O.W.を実戦投入していたことにクリスは衝撃を受ける。
長年血を流して守ってきた組織に一体何が起きているのか——疑念を胸に、クリスは「真相を確かめる」と宣言し、部下たちと共にBSAA欧州本部へ乗り込む決意を固めた。シリーズ最新作『ヴィレッジ』は、クリスがこれまで信じてきた正義そのものに問いを突き付けられる形で幕を閉じる。
この頃のクリスは48歳前後と推測される。年齢を重ね、かつての熱血さに加えて非常に渋く寡黙なベテランの雰囲気を漂わせている。それでも内に秘めた強い正義感と責任感は昔と少しも変わらない。
いや、むしろ幾多の犠牲を乗り越えてきたことで彼の正義には深みと重みが増したようにも思える。敵対者であってもその背景にある事情まで思いを馳せる哲学的な一面も持ち合わせており、例えばウェスカーを倒した後に「俺にとっては悪を倒した正義の行いでも、ウェスカーの息子(ジェイク)から見れば俺は父親を殺した憎むべき悪なんだ」と語るような場面もあった。
長い戦いの中で多面的に物事を考えるようになったクリスは、単なる熱血ヒーローではなく苦悩する人間らしさも感じさせるキャラクターへと成長している。
まとめ:不屈の魂を持つ生ける伝説
こうして振り返ると、クリス・レッドフィールドの歩みは苦難と闘志の連続だった。初任務の洋館事件で恐怖に直面しながらも正義を貫き通した若き日。愛する妹や仲間を守るため命懸けで戦った幾多の激闘。そして自身の信じる正義を胸に、組織の枠を超えて世界の脅威に立ち向かい続ける現在まで。クリスは常に自ら先頭に立ち、人々を守る盾であり続けた。
人物像としてのクリスは、根っこの部分では「他者を守る優しさ」と「使命を果たす責任感」に支えられている。それはS.T.A.R.S.時代から一貫して変わらない。しかし経験を重ねるごとに、彼の正義感には冷静さや葛藤も加わった。
時に大切な人を失い、怒りや無力感に苛まれながらも、それでも彼は立ち上がる。仲間の支えや新たな出会いによって再び前を向き、不屈の魂で困難に挑み続ける。
ファンからは「苦労人」「隊長」と親しまれるクリスだが、シリーズ未体験のビギナーにとっても彼の物語はきっと心に響くものがあるだろう。派手なアクションのみならず、人間味あふれるエピソードや成長のドラマが詰まっているからである。クリス・レッドフィールドは、ゾンビや怪物と戦うタフガイであると同時に、仲間を想い葛藤する一人の男の生き様そのものでもある。
今や50歳を目前にしてなお最前線を走り続けるクリス。彼の戦いはまだ終わっておらず、組織の闇に立ち向かおうとする新たな章が示唆されている。長年のファンも新規のプレイヤーも、これからのクリスの活躍から目が離せない。
苦境でも決して諦めない“生ける伝説”クリス・レッドフィールド――その不屈の精神と熱い生き様は、バイオハザードシリーズの中でこれからも語り継がれていくに違いない。


